防衛特別法人税創設による法定実効税率の改定について

はじめに

2025年度の税制改正により、日本の防衛力の抜本的な強化を行うための安定的な財源の確保を目的として、防衛特別法人税が2025年3月中にも創設される見込みです。

この防衛特別法人税は法人税額を課税標準とするため、2025年3月中に創設された場合には、2025年3月期の期末決算において、法定実効税率の算定のなかで防衛特別法人税の影響を加味する必要があります。本記事では防衛特別法人税が法定実効税率に与える影響について解説していきます。

防衛特別法人税について

防衛特別法人税は、法人税が課される法人を対象として、法人税額の4%を税額とします。

なお、中小法人への配慮の観点より、税額の計算にあたっては課税標準となる法人税額から500万円の控除を行ったうえで4%を乗じ、防衛特別法人税の金額を算出するものとされています。500万円の控除により、法人税額が500万円を下回る中小法人においては防衛特別法人税が生じないことになります。

適用開始時期については、2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

(算定式)

防衛特別法人税 = (基準法人税額*1 - 基礎控除額500万円) × 4% - 税額控除*2

*1 基準法人税額:所得税額の控除、外国税額の控除等の制度を適用しないで計算した各事業年度の所得の法人税額

*2 税額控除:外国税額の控除、分配時調整外国税相当額の控除等の特定の税額控除

法定実効税率について

法定実効税率とは、法人が所得に対して実質的に負担する税率です。例として、東京都で資本金が1億円を超える法人の場合、実効税率は2018年4月より30.62%の状態が続いています。

法定実効税率は、税効果会計において繰延税金資産及び繰延税金負債の金額を計算する際に使用します。繰延税金資産及び繰延税金負債の計算にあたっては、対象となった一時差異が解消すると見込まれる期の法定実効税率に基づいてそれぞれ計算されます。そのため、2026年4月1日以後に開始する事業年度に解消が見込まれる一時差異については、防衛特別法人税を加味した実効税率を適用して繰延税金資産及び繰延税金負債の計算を行う必要があります。

法定実効税率の算定式は下記のとおりです。

(防衛特別法人税を考慮前)

(防衛特別法人税を考慮後)

法人税や地方法人税、及び防衛特別法人税などの国税の税率は地域差はありませんが、法人住民税や事業税などの地方税については、法人の所在する地域によって税率が異なるため、地域によって実効税率は僅かに異なります。

一例として、東京都23区の法人で実効税率の算定方法を紹介します。

税率は外形標準課税法人(資本金1億円超の法人)or中小法人(資本金1億円以下の法人)、標準税率or超過税率などケースバイケースで異なりますので、①外形標準課税法人の場合、②中小法人で標準税率が適用される法人の場合、③中小法人で超過税率が適用される法人の場合の3パターンを紹介します。

 (東京都(23区)の法人の各税率)外形標準課税法人
(資本金が1億円超の法人)
中小法人
(資本金が1億円以下の法人)
法人税率23.20%23.20%
地方法人税率10.30%10.30%
法人住民税率*1標準税率 7.00% 7.00%
超過税率10.40%10.40%
事業税率*2標準税率 1.00% 7.00%
超過税率 1.18% 7.48%
特別法人事業税率260.00%37.00%
防衛特別法人税 4.00% 4.00%

*1…法人税額が1,000万円超の場合には超過税率が適用される。なお、外形標準課税法人には超過税率が適用される。

*2…所得金額が2,500万円超の場合には超過税率が適用される。なお、外形標準課税法人には超過税率が適用される。

外形標準課税法人の場合

東京都23区の法人で資本金が1億円超の外形標準課税法人の場合、法人住民税や事業税はいずれも超過税率が適用されるため、資本金が1億円を超えている法人の実効税率はどの法人も同じ税率になります。

(防衛特別法人税を考慮前)

(防衛特別法人税を考慮後)

中小法人で標準税率が適用される法人の場合

東京都23区の法人で資本金が1億円以下の中小法人の場合、法人住民税率や事業税率については標準税率or超過税率

のどちらかが適用されます。いずれも標準税率が適用される場合の実効税率は下記のとおり算定されます。

(防衛特別法人税を考慮前)

(防衛特別法人税を考慮後)

中小法人で超過税率が適用される法人の場合

次に、法人住民税、事業税のいずれも超過税率が適用される場合の実効税率の算定式は下記のとおりです。

(防衛特別法人税を考慮前)

(防衛特別法人税を考慮後)

まとめ

東京都23区の法人の場合、防衛特別法人税の適用前後での法定実効税率をまとめると、以下の表のとおりです。

今回は防衛特別法人税が法定実効税率に与える影響について、東京都23区の法人を例に解説を行いました。

当記事で解説した法定実効税率のみならず、税効果会計に関してご不明点があればぜひアドス共同会計事務所までお問い合わせください

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA