改正リース基準概要解説(4回/全5回)_短期・少額リース

概要

旧リース会計基準においては、条件を満たす取引については簡便的な会計処理としてオペレーティング・リース取引に準じる会計処理が認められていました。新リース会計基準においても、条件を満たす取引については、使用権資産及びリース負債を計上せず、リース料をリース期間にわたって定額で費用計上することができる等の簡便的な会計処理の定めが設けられている点は同様です。

ただし、簡便的な会計処理を適用する「条件」についても、「短期であること」「少額であること」等の考え方の大枠は同じですが、その要件は必ずしも同じではないため、注意が必要です。

短期リースとして取扱うための条件

旧リース会計基準および新リース会計基準ともに、短期リースとして取扱うためには、「リース期間が1年以内(12か月以内)」であることが必要な点は変更がありませんが、新リース会計基準においては「購入オプションを含まない」ことも短期リースに該当するためには必要な条件である点が、変更点として挙げられます。

そのため、旧リース会計基準において、所有権移転リースに該当する短期リース等、新リース会計基準においては短期リースとしての取扱いができないケースが想定されます。

なお、公開草案の段階では、短期リースとは「リース開始日において、借手のリース期間が 12 か月以内で あるリース」とされていましたが、新リース会計基準においては、「購入オプションを含まないリース」という条件が追加されています。(リースに関する会計基準の適用指針(案)4項(2)/リースに関する会計基準の適用指針4項(2))

また、短期リースとしたリースについて、借手のリース期間に変更がある場合で、変更前の借手のリース期間の終了時点から変更後の借手のリース期間の終了時点までが12 か月以内であるときは、次のいずれかの方法を選択することができるとされています。(リースに関する会計基準の適用指針第50項、BC80項)

(1) 変更後のリースについて短期リースとして取り扱う方法

(2) 変更後のリースのうち、借手のリース期間の変更時点から変更後の借手のリース期間の終了時点
までが12 か月以内である場合のみ、短期リースとして取り扱う方法

少額リースとして取り扱うための条件

旧リース会計基準および新リース会計基準ともに、「リース料総額」に対する判定基準として「購入時に費用処理する方法が採用されている基準額以下のリース取引」については、少額リースとして簡便的な処理が容認されていることは共通しています。これは、税務上の少額資産に該当する資産等について、会計処理として取得時の費用処理を採用する方針の際に、リース資産も同様の基準で判断することが容認する考え方が新リース会計基準においても踏襲されたものと考えられます。

また、旧リース会計基準において、所有権移転外リースについてのみ「リース料総額」に対する判定基準として「リース料総額が300万円以下」であるリース取引については、少額リースとして簡便的な処理が容認されていましたが、新リース会計基準においては、「リース料総額」に対する判定基準として「企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、かつ、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリース」という基準が設定され、旧リース会計基準の300万円基準を設定することで、新リース会計基準適用に伴う負担の軽減が図られていると考えられます。(リースに関する会計基準の適用指針BC41)なお、新リース会計基準では、所有権移転/所有権移転外という区分が借手リースではないため、旧リース会計基準における所有権移転リースについては、少額リースの範囲が結果的に広がる可能性があります。

また、新リース会計基準では新たにリース資産の「原資産の価値」に対する判定基準が設定され、「新品時の原資産の価値が少額であるリース」については少額リースとして取扱うことができます。新品時の購入価額が少額であるか否かは、IFRS16号における「5 千米ドル以下程度の価値の原資産」が念頭におかれた基準設定であると考えられます。(リースに関する会計基準の適用指針BC41、BC45)

なお、新リース会計基準における少額リースの判定にあたっては、「企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、かつ、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリース」と「新品時の原資産の価値が少額であるリース」はいずれかの選択適用とされています。(リースに関する会計基準の適用指針第22項、BC42)

なお、少額リースに関しては、公開草案の段階と比較すると規定の表現が異なる箇所はありますが、結論の背景を含めた全体の趣旨に大きな相違はないと見受けられます。

注記

新リース会計基準において、容認規定を適用し簡便的処理を行った短期リース・少額リースのうち、短期リースについては、短期であるものの重要な金額の取引が含まれる可能性があるため、短期リースについて開示を求める一方で、少額リースに関しては、個々の取引が重要でないことから、実務負担に配慮し、注記を求められていません。なお、短期かつ少額のリースについては、短期リースの開示を求める趣旨に鑑み、個々の取引が少額であるため注記を要しない方針とされています。(リースに関する会計基準の適用指針第100項、BC146、BC147)

なお、公開草案の段階では、「短期リースに係る費用の金額に少額リースに係る費用の金額を合算した金額で注記することができる」とされていましたが、新リース会計基準においては、当該規定はなくなっています。(リースに関する会計基準の適用指針(案)98項(1))

まとめ

新リース会計基準へ移行後も短期リース・少額リースの考え方は踏襲されている面がありますが、借手については、所有権移転/所有権移転外取引という区別が新リース会計基準ではなくなったことに伴い、少額リースの適用方針に影響が出る点や、新たな少額リースの考え方が追加された点が今後適用を進める上での留意事項となります。

新リース会計基準等の適用に向けて、不安なことがございましたら、アドス共同会計事務所までぜひ、ご相談ください

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