改正リース基準概要解説(5回/全5回)_IFRS16号と新リース会計基準の主要な相違点
概要
2024年9月13日に公表された「企業会計基準第34号 リースに関する会計基準」及び「企業会計基準適⽤指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針」(以下、「新リース会計基準等」といいます。)に関する記事としては最終回となりますが、今回は参考までに、IFRS第16号「リース」と新リース会計基準等の主要な相違点について触れておきます。
なお、過去の会計記事でも言及したとおり、新リース会計基準等は連結財務諸表のみではなく、個別財務諸表にも適用されることが明記されています(基準BC20~21項)。
したがって、既に連結財務諸表において「IFRS 第16 号」を適用していた企業についても、改正リース会計基準案等の適用により、新たに個別財務諸表上から、オペレーティング・リースのオンバランス化及びそれに伴う減価償却等の対応が必要です。
IFRS第16号「リース」と新リース会計基準等の主要な相違点
No | 項目 | IFRS第16号「リース」 | 新リース会計基準等 |
1 | 借⼿のリース期間 | リース期間としてとり得る最⻑期間として「契約に強制⼒のある期間」を考慮している。 (IFRS16.B34) | ・再リース期間を借⼿のリース期間に含めていなかった場合には、再リース部分は借⼿のリース期間の変更に関する規定に関わらず、当初のリースとは独⽴したリースとして会計処理を⾏うことができる。 ・「契約に強制⼒のある期間」の概念は取り入れてはいない。 (適用指針52項) |
2 | 借手のリース料 | 指数⼜はレートに応じて決まる変動リース料は、リース期間にわたり変動しないとみなしてリース負債の測定に含め、今後⽀払うリース料に変動が⽣じたときにのみリース負債を再測定する(⾒積りによる再測定は不可能である)。 (IFRS16.27(b), 42) | IFRS第16号と同様とするが、合理的な⾒積りが可能な場合は将来の変動を⾒積り反映する(決算⽇ごとに⾒積りは⾒直す)ことも可能。 (適用指針26項) |
3 | 短期リースの借手のリース期間変更 | 変更前の借手のリース期間の終了時点から変更後の借手のリース期間の終了時点までが12 か月以内であるときは、変更後のリースのうち、借手のリース期間の変更時点から変更後の借手のリース期間の終了時点までが12 か月以内である場合のみ、短期リースとして取り扱う。 (IFRS16.45) | 変更前の借手のリース期間の終了時点から変更後の借手のリース期間の終了時点までが12 か月以内であるときは、 変更後のリースについて短期リースとして取り扱うことも認められる (選択適用により、IFRSと同様の方法とすることも可能)。 (適用指針50項) |
4 | リースを構成する部分と構成しない部分 | 借⼿に財⼜はサービスを移転しない活動及びコストに対する借⼿の⽀払いは、契約の対価の⼀部とみなして構成要素に配分する。(IFRS16.B33) | 貸⼿は、維持管理費⽤相当額を契約の対価から控除し別途処理することも認められている(借⼿はIFRS第16号と同様)。 (適用指針13項) |
5 | 所有権移転ファイナンス・リースと移転外ファイナンス・リースの区分 | 貸⼿にはファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分があるが、所有権移転ファイナンス・リースと移転外ファイナンス・リースの区分は無い。 | 貸⼿については、所有権移転ファイナンス・リースと移転外ファイナンス・リースの区分を維持する。 (適用指針70項) |
6 | 貸⼿のリース期間 | 借⼿のリース期間と同様である。(IFRS16.A) | 借⼿とは異なり、貸⼿のリース期間は解約不能期間+再リース期間に限定され、オプション期間を含まない。 (基準16項) |
7 | 貸⼿のリース料 | 残価保証の扱いを除き、借⼿のリース料と同様である。 (IFRS16.A) | 借⼿と異なり、リース料はリースにおいて合意された使⽤料(残価保証額を含む)とされる。将来の業績等により変動する使⽤料を含めないこと以外に、詳細な定めはない。 (基準23項) |
8 | セール・アンド・リースバック | ・資産の譲渡が売却の要件を満たす場合には、借⼿は貸⼿に移転された権利に係る利得⼜はその損失の⾦額のみを認識する。 (IFRS16.100) ・資産の譲渡が売却の要件を満さない場合には、借⼿・貸⼿ともに⾦融取引としての処理が要求されている。 (IFRS16.103) | ・資産の譲渡が、収益認識会計基準に従い、「⼀定の期間にわたり充⾜する履⾏義務」の充⾜により⾏われる場合は、セール・アンド・リースバックに該当しない。 (適用指針53項) ・セール・アンド・リースバック取引が売却の要件を満たす場合(金融取引の要件を満たさない場合)、資産の譲渡とリースバックを別個に処理し、売却損益を全額認識する。 (適用指針56項) |
9 | サブリース取引 | ・ヘッドリースによる使⽤権資産をサブリースすることが⾒込まれる場合、ヘッドリースを少額資産のリースとしてオフバランスすることを認めない。 (IFRS16.B7) ・サブリースの例外的な取り扱いはない。 | ・サブリースが⾒込まれる場合でも少額資産のリースの対象とすることを否定しない。少額資産のサブリースはオペレーティング・リースに分類される。 (適用指針91項) ・転リース取引および⼀般的にパススルー型と⾔われるような取引について、例外的な取扱いが設けられている。 (適用指針92~93項) |
10 | 表示 借手 | 使⽤権資産は区分表⽰する。区分表⽰しない場合は、対応する原資産を⾃ら保有していた場合に表⽰するであろう科⽬に含める。(IFRS16.47(a)) | ・対応する原資産を⾃ら所有していたと仮定した場合の表⽰科⽬に含めて表⽰する、若しくは原資産が有形固定資産であるものについては有形固定資産において、原資産が無形固定資産であるものについては無形固定資産において、それぞれ使⽤権資産として区分して表⽰する。 (基準49項) |
11 | 注記 借手 | 短期リースに係る費⽤、少額資産のリースに係る費⽤はそれぞれ別に開⽰が求められる。 (IFRS16.53(c),(d)) | 少額リースに係る費⽤は開⽰対象ではない。 (適用指針100項(1)) |
※1 「少額リース」の費用開示について、公開草案においては短期リースに係る費⽤を開⽰する際に、少額リースにかかる費⽤を含めた開⽰とすることも認められるとされていましたが、最終化に伴い、当該記載は削除されました。したがって、短期リースかつ少額リースに該当するリースについては短期リースに係る費用の発生額の注記には含めないことが適切と考えられます。
※2 「短期リース」の判定について、公開草案においては購⼊オプションを含んでいるか否かは考慮不要であるとされていましたが、最終化に伴い、IFRS第16号と同様に「購入オプションを含まない」ことが必要とされました。(適用指針4項(2))
まとめ
今回はIFRS第16号「リース」と新リース会計基準等の主要な相違点について表形式で記載させていただきました。
新リース会計基準等については、2023年5月公表の公開草案が2024年9月13日に最終化されています。
新リース会計基準等を適用するには、会計処理の変更にとどまらず、リース取引に係る情報収集プロセスを構築することが不可欠となります。またそのためには業務プロセスの変更やシステム導入、管理会計手法等の見直し等も必要となる可能性が高いです。
アドス共同会計事務所では、新リース会計基準等適用のための必要事項の洗い出しをはじめとして、適用による影響額の概算、必要に応じたリースシステム導入のアドバイス、リースに関する内部統制の構築支援等といった総合的な支援が可能です。
新リース会計基準等の適用に向けて、不安なことがございましたら、アドス共同会計事務所までぜひ、ご相談ください。