日本企業の直近のIFRS適用状況の解説

はじめに

今回は、2024年7月22日に日本取引所グループ(JPX)より公表された『2023年4月から2024年3月31日決算会社の「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の開示内容の分析』(以下、東証資料)から一部抜粋させて頂き、日本企業の直近のIFRS適用状況について解説していきます。

(出典:2023年4月から2024年3月31日決算会社の「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の開示内容の分析(2024年7月22日)

IFRS適用会社数の推移について

東証資料によれば、2024年6月末時点におけるIFRS適用済会社数は272社であり、IFRS適用決定会社及びIFRS適用予定会社を含めると284社となりました。2024年6月末時点の東証上場内国会社は3,830社ですので、IFRS適用済会社の割合は会社数ベースでは7.4%とそこまで多くないことが分かります。

市場別にみると、直近1年間ではグロース・スタンダード市場における適用会社が9件と、プライム市場における適用1件を大きく上回っています。従来はプライム市場が中心であったIFRS適用が、グロース・スタンダード市場にも広がっており、一流大企業のみがIFRS適用できるという風潮は無くなってきているように思います。

IFRS適用会社の時価総額について

IFRS適用済会社の割合は会社数ベースでは7.4%と多くないものの、時価総額ベースでは東証上場会社全体1,004兆円のうち、IFRS適用済・適用決定・適用予定会社合計の占める金額は491兆円となり、金額割合は48.9%で半分程度となります。

市場別にみると、プライム市場におけるIFRS適用会社の時価総額割合がもっとも大きいのは想定通りかと思いますが、グロース市場においてもIFRS適用会社の時価総額割合は15.3%を占め、前年比+6.6%という結果となっています。これは、直近1年間のグロース市場へのIPOにおいてIFRS基準を適用して上場した企業が多いためと考えられます(㈱アプリックス、㈱エフ・コード、ライフネット生命保険㈱など)。

業種別のIFRS適用状況について

業種別のIFRS適用状況については以下表のとおりです(東証資料をもとにアドス共同会計事務所作成)。

業種東証上場会社数IFRS会社数※社数比率時価総額比率
医薬品781924.4%92.7%
輸送用機器881719.3%88.9%
ゴム製品18527.8%86.0%
鉱業6116.7%81.1%
卸売業299144.7%75.2%
保険業13430.8%75.1%
精密機器49714.3%74.9%
情報・通信業602427.0%68.6%
食料品1241310.5%63.2%
鉄鋼4249.5%62.9%
電気機器2383012.6%55.9%
石油・石炭製品10110.0%51.2%
繊維製品4948.2%47.2%
サービス業535458.4%43.2%
空運業6116.7%41.9%
化学209167.7%34.5%
小売業342144.1%30.8%
機会222177.7%30.8%
ガラス・土石製品5435.6%29.3%
非鉄金属3438.8%25.6%
その他金融業39615.4%22.0%
証券、商品先物取引業4037.5%19.2%
金属製品8733.4%9.8%
水産・農林業1218.3%5.1%
不動産業13932.2%3.8%
その他製品10632.8%3.7%
陸運業6023.3%3.3%
建設業15210.7%1.7%
電気・ガス業2727.4%1.2%
海運業1100.0%0.0%
パルプ・紙2400.0%0.0%
倉庫・運輸関連3600.0%0.0%
銀行業7900.0%0.0%
合計3,830284--
※IFRS適用済・適用決定・適用予定会社の合計

医薬品、輸送用機器、ゴム製品、鉱業、卸売業が時価総額順ではトップ5となり、逆に海運業、パルプ・紙、倉庫・運輸関連、銀行業ではいまだにIFRS適用企業が1社も存在しない状況です。

まとめ

今回は日本企業の直近のIFRS適用状況について東証資料を一部抜粋して解説させて頂きました。

特にグロース市場においてIFRS適用会社数・金額割合の増加が目立つ結果となっており、大手企業でなくとも、IFRS適用を考える企業が多くなっている傾向が資料から読み取れました。

次回のIFRS記事では、そもそもなぜIFRS適用を行うのかIFRS適用によるメリットを中心にお話ししていこうと思います。

本記事に関する疑問点等がございましたらお問い合わせページよりお気軽にお問い合わせください。

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