改正リース基準概要解説(2回/全5回)_実質判断に基づくリース取引

※2024年9月13日のリース基準に関する会計基準等の公開に伴い、参照基準等の記事の記載を一部修正しました。

概要

新リース会計基準における主な改正内容の1つとして、旧リース会計基準においては貸借契約やリース契約等の法的形式に基づいたリース判断であったのに対して、改正後は、原資産の使用を支配する権利が借手に移転しているか否かに基づき実質的に判断することが必要となります。

したがって、新リース会計基準適用後は法的形式に関わらず実質的にリース取引の該当要否を判断することから、一般的に新リース会計基準の方が旧リース会計基準よりもリース取引の範囲が広く、以下の図のような関係であると考えられます。

リースの識別方法

新リース会計基準において、実質的にリースを含むか否かを判定するための検討フローとして以下のフローチャートが設例として公開されており、リースを含むか否かの判定を行う際は当該フローチャートが有用と考えられます。

出典:リースに関する会計基準の適用指針(設例1)

当該フローチャートは(1)資産が特定されているかどうかの判断、(2)資産の使用を支配する権利が移転しているかどうかの判断の2つに大別され、いずれも満たす場合において、実質的にリースを含む取引と判定されます。以下でこの(1)と(2)の判定におけるポイントを解説します。

<(1)資産が特定されているかどうかの判断>

資産が特定されているかどうかの判断における最も重要なポイントは「契約上において特定された資産が明記されているか否か」です。契約上にそもそも資産の特定がされていない場合は、当該契約はリースを含まないこととなり、新リース会計基準等の影響を受けないと考えられます。

「契約上において特定された資産が明記されている」場合も、次の①及び②のいずれも満たすときには、サプライヤーが当該資産を代替する実質的な権利を有しており、顧客は特定された資産の使用を支配する権利を有していないと定められています。(リースに関する会計基準の適用指針6項)

  • ①サプライヤーが使用期間全体を通じて当該資産を他の資産に代替する実質上の能力を有している。
  • ②サプライヤーにおいて、当該資産を他の資産に代替することからもたらされる経済的利益が、代替することから生じるコストを上回ると見込まれるため、当該資産を代替する権利の行使によりサプライヤーが経済的利益を享受する。

上記①②の判断においては、契約上に「特定された資産を変更することができる定め」の有無を確認し、「特定された資産を変更することができる」場合においては、当該変更に関して「サプライヤーが顧客の承諾もなく、無条件で変更を実施できるか否か」を確認することが有用と考えられます。なぜなら、「顧客の承諾が必要」な場合においては、上記①の実質上の能力を有していないと考えられ、無条件ではなく例えば「故障した時等の条件付きで資産の変更ができる」場合においては、当該変更にサプライヤー側に経済的利益がないため、②を満たさない可能性が高いものと考えられるためです。

【契約書の確認ポイント】

  • 特定された資産が明記されているか
  • 特定された資産を変更することができる定めがあるか
  • サプライヤーが顧客の承諾もなく、無条件で変更を実施できるか否か

なお、「資産が特定されているかどうかの判断」に関して定めている、新リース会計基準の定め(リースに関する会計基準の適用指針6項および7項)と、従前公表されていた公開草案(リースに関する会計基準の適用指針(案)6項および7項)の定めには特段の相違は生じていません。

<(2)資産の使用を支配する権利が移転しているかどうかの判断>

資産の使用を支配する権利が移転しているかどうかの判断指針は、特定された資産に対する「①使用期間全体を通じた使用から生じる経済的利益」、「②使用方法を指図する権利」の2つに大別されます。

「①使用期間全体を通じた使用から生じる経済的利益」を検討するにあたっては、契約上において資産の使用制限の有無を確認することが有用と考えられます。例えば車両の賃借契約等において、走行距離の定めがある場合等が、①の要件を満たさない可能性を示唆するものと考えられます。

「②使用方法を指図する権利」については、顧客かサプライヤーいずれかの定めが契約上に存在するかを確認しますが、一般的な賃借契約等においては、「使用方法の決定が事前になされている(例えば、店舗の目的/事務所の目的等)」が多いものと想定されます。その場合は誰が稼働する権利を有するか検討し、仮に顧客以外が稼働する権利を有している場合には、使用方法が契約上において事前に定められているかどうかの確認を行います。

なお、「資産の使用を支配する権利が移転しているかどうかの判断」に関して定めている、新リース会計基準の定め(リースに関する会計基準の適用指針第 5 項(1)および8項(1)(2))と、従前公表されていた公開草案(リースに関する会計基準の適用指針(案)5 項(1)および8項(1)(2))の定めには特段の相違は生じていません。

まとめ

リースを含むか否かの判定は同一資産であっても異なる結論となることが想定され、リースに関する会計基準の適用指針の設例においても、サーバーや発電施設等の資産を例に、異なる契約条件下における判断過程を複数示しています。実務上、リースを含むかどうかの判定は難しいポイントの1つであるため、今後、新リース会計基準の適用を検討する際には、慎重な検討が必要です。

新リース会計基準等の適用に向けて、不安なことがございましたら、アドス共同会計事務所までぜひ、ご相談ください

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