改正リース基準概要解説(3回/全5回)_リース期間の判定
概要
今回はリース期間の判定の改正について解説します。
リース期間については、実質的な判定を伴うケースが多く、留意が必要な論点です。
旧リース会計基準では延長オプションもしくは解約オプションについて、明示的な記載はなく、契約期間(解約不能期間)=リース期間とされる実務がよく見られました。
新リース会計基準では、借手のリース期間について以下を期間に含めることが求められました(リースに関する会計基準15項)。
- 解約不能期間
- 借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの期間
- 行使しないことが合理的に確実であると判断されるリースの解約オプションの期間
また、上記「合理的に確実」かどうかの判断の際に経済的インセンティブを考慮することとされており、具体的な事例として、以下が列挙されています(リースに関する会計基準の適用指針第17項)。
- 延長又は解約オプションの対象期間に係る契約条件(リース料、違約金、残価保証、購入オプションなど)
- 大幅な賃借設備の改良の有無
- リースの解約に関連して生じるコスト
- 企業の事業内容に照らした原資産の重要性
- 延長オプション又は解約オプションの行使条件
借手のリース期間の判定の実務的な対応
上記のように新リース会計基準では、延長オプションまたは解約オプションの合理的な確実性の判断が求められるため、考慮すべきポイントを事前に具体化しておくことが有用です。
この点、新リース会計基準設例では普通借家契約を例に設例を設けていますが、設例で検討されていたポイントの一部を紹介します。なお、リース期間の判定は1つのポイントのみで判断するものではなく、各ポイントなどを考慮し総合的に判断する必要があります。
項目 | 延長および解約オプションの行使の確実性に対する検討ポイント |
---|---|
賃借契約の種類 | 普通賃借契約は借手の意思で更新できるため、延長オプションであると判断します。 |
類似の契約の賃借において延長オプションを行使しているか | 例えば普通借家契約(契約期間2年)を実施し、過去に類似の契約で平均10年の賃借期間の場合、延長する可能性が合理的に確実であると判断する可能性があります。しかしこれを根拠に一律にリース期間を10年とするのは合理的ではない点には留意が必要です。また、一部の賃借実績が平均賃借期間を引き上げているケースもあり、その点も考慮が必要です。 |
賃借資産や賃借資産に付随する自作の建物附属設備の経済的残存耐用年数 | 賃借した土地に建築した建物の経済的残存耐用年数が延長オプションに影響する可能性があります。なお、建替計画が事業計画上明記されている場合、建物の経済的残存耐用年数を超えたリース期間が合理的と考えられる可能性があります。 |
賃借資産を使用する事業の継続性 | 例えば、賃借資産を使用した事業の廃止が決まっている場合、かつ、他の事業に対して賃借資産の転用が計画していない場合、事業の廃止時点での解約オプションの行使が合理的であると判断される可能性があります。 |
事前準備のポイント
リース期間の検討は将来予測を多分に含むものですが、上記のように、法的な契約の性質の検討からスタートし、過去の類似の賃借契約の使用年数の実績や、賃借用途を考慮し、予測時点で最善の見積りとなるように設計されています。
上記設例では、類似案件の賃借年数や、合理的な事業計画の年数等事前の情報収集が必要となります。
まとめ
基本的には、リース開始日におけるリース期間内の未払リース料の割引現在価値が、使用権資産としてオンバランスされる金額の大部分となることから、リース期間は使用権資産の当初計上額に最も著しい影響を与えます。
そのため、契約に延長・解約オプションが含まれるか、含まれる場合は延長・解約オプションをリース期間にどのように反映するか等、事前に詳細な検討及び文書化が必要です。
新リース会計基準等の適用に向けて、不安なことがございましたら、アドス共同会計事務所までぜひ、ご相談ください。