新リース基準の税務調整

税制改正大綱におけるリースの税務調整の概要

2024年9月13日に公表された「企業会計基準第34号 リースに関する会計基準」及び「企業会計基準適⽤指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針」(以下、「新リース会計基準等」といいます。)に関して、令和7年度税制改正大綱において税務調整の言及がありましたので、本記事で追加解説させて頂きます。

令和7年税制改正資料(P.55)より>

(8)リースに関する取引について、次のとおり整備を行う。

① 法人が各事業年度にオペレーティング・リース取引によりその取引の目的となる資産の賃借を行った場合において、その取引に係る契約に基づきその法人が支払う金額があるときは、その金額のうち債務の確定した部分の金額は、その確定した日の属する事業年度に損金算入する。

(注1)上記の「オペレーティング・リース取引」とは、資産の賃貸借のうちリース取引(ファイナンス・リース取引)以外のものをいう。

(注2)上記の支払う金額には、その資産の賃借のために要する費用の額及びその資産を事業の用に供するために直接要する費用の額を含むものとし、当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額、固定資産の取得に要した金額とされるべき費用の額及び繰延資産となる費用の額を除く。

結論としては、税務上のリース取引及びリース以外の賃貸借取引の取り扱いについて、従来から大きな変更はありません。つまり、税務上は新リース会計基準適用前後に関わらず、ファイナンス・リース取引(法人税法上のリース取引)は売買処理(売買があったものとして所得計算を行う)、オペレーティング・リース取引は賃貸借処理となります。

上記税制改正大綱資料の(8)①に記載されている内容は、会計上は新リース会計基準等を適用し、従来オフバランス処理していたオペレーティング・リースをオンバランス(売買処理)したとしても、税務上はオフバランス(賃貸借処理)として計算することを定めた内容であるためです。

なお、新リース会計基準は、原則としては公認会計士または監査法人の監査を受ける会社(上場企業など金融商品取引法の適用を受ける会社やその関係会社、会計監査人を設置する会社等)が適用対象となります。具体的な適用対象会社は以下のとおりです。

  1. 上場企業とその子会社・関連会社
  2. 資本金5億円以上または負債総額200億円以上の大会社
  3. 監査等委員会設置会社
  4. 指名委員会等設置会社

中小企業等における取り扱い

上記に該当しない会社(中小企業等)は、「中小企業の会計に関する指針」に拠って会計処理や注記等を行うことが推奨されています。リース取引についても当該指針に従った会計処理を行うことになりますが、指針第75-3項に記載されているとおり、会計上は所有権移転外ファイナンス・リース取引について売買処理のほか賃貸借処理が認められています。なお、新リース会計基準等に併せて今後改正が行われる可能性もありますのでご注意ください。

中小企業の会計に関する指針
75-3.所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る借手の会計処理 (1) リース取引開始時の会計処理 所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る借手は、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行う。ただし、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができる。 なお、法人税法上は、すべての所有権移転外リース取引は売買として取り扱われる。

会計上、賃貸借処理を行いリース料を賃借料として損金経理した場合、税務上も法令131条の②において賃借料を償却費とみなして損金算入できる旨の規定が存在しますが、今回の税制改正大綱において当該規定についての言及はありませんでした。したがって、法令131条の②は存続される見通しであり、中小企業等においてリース料を賃借料として損金経理した場合の税務調整は不要となると考えられます。

法人税法施行令 第131条の2  リース取引の範囲 第3項
法第64条の2第1項の規定により売買があつたものとされた同項に規定するリース資産につき同項の賃借人が賃借料として損金経理をした金額又は同条第2項の規定により金銭の貸付けがあつたものとされた場合の同項に規定する賃貸に係る資産につき同項の譲渡人が賃借料として損金経理をした金額は、償却費として損金経理をした金額に含まれるものとする
法人税法第64条の2  リース取引に係る所得の金額の計算 第1項
内国法人がリース取引を行った場合には、そのリース取引の目的となる資産(以下この項において「リース資産」という。)の賃貸人から賃借人への引渡しの時に当該リース資産の売買があつたものとして、当該賃貸人又は賃借人である内国法人の各事業年度の所得の金額を計算する

上場企業等、中小企業等における処理まとめ

税制改正後の借手のリースの会計処理と税務処理をまとめると、以下の表のとおりです。

 上場企業等 (新リース会計基準等適用会社)中小企業等 (新リース会計基準等非適用会社)
会計処理法人税処理会計処理法人税処理
原則処理 (ファイナンス・リース 及び オペレーティング・リース)所有権移転ファイナンス ・リース売買処理 ※1売買処理売買処理 ※1売買処理
所有権移転外ファイナンス・ リース賃貸借処理 or 売買処理賃貸借処理 ※2 or 売買処理
オペレーティング ・リース売買処理 ※1賃貸借処理賃貸借処理賃貸借処理
例外処理 (少額・短期リース)賃貸借処理賃貸借処理 ※2賃貸借処理賃貸借処理 ※2
※1 使用権資産及びリース負債の計上等
※2 賃借料として損金計上した場合に償却費としてみなす

今回は新リース会計基準等の税会差異について、令和7年度税制改正大綱をもとに簡単に解説させて頂きました。

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